シンガポールで起業?なぜ企業はアジアを狙うのか?

シンガポール経済

IMFの統計によると、2015年のシンガポールのGDPは2939億ドルであり、愛知県とほぼ同じ経済規模である。同年の一人当たりのGDPは53,225ドルである。また同年の一人当たり国民総所得(GNI)は52,090ドルで、アメリカ合衆国に次ぐ世界第9位となっており、香港を除けばアジア首位の高所得国である。

アメリカのシンクタンクが2017年に発表した総合的な世界都市ランキングにおいて、世界6位の都市と評価された。アジアの都市では東京、香港に次ぐ3位である。国際競争力が非常に強い国であり、2016年の世界経済フォーラムの研究報告書において、スイスに次ぐ世界2位の国と評価された。アジアを代表する金融センターの一つであり、2017年にはロンドン、ニューヨークに次ぐ世界3位の金融センターと評価された。2015年の勤労者世帯の平均世帯月収は11,510シンガポールドルであり、東京都の勤労者世帯の平均を大きく上回っている。

では、なぜ日本企業はシンガポールへ?

シンガポール…

そこには、金融、貿易、交通、物流、情報、教育など、あらゆる分野の中枢を目指すシンガポールの戦略があります。

シンガポールは世界で最もビジネスに適した国

世界銀行発表「Doing Business 2012」によりますと、シンガポールは世界で最もビジネスを行いやすい国の1位に選ばれています。

市場が成熟し内需拡大が見込めない先進諸国(日本…もそうですが)の企業は自国の外にマーケットを求めて打って出ようとします。そして、世界で最もビジネスを行いやすい国として1位のシンガポールが選ばれるのは当然

世界183ヵ国・地域を対象にビジネスのしやすさを調査した年次報告……で、シンガポールが4年連続で1位を維持した

http://www.asiax.biz/news/2009/09/11-070050.php

シンガポールは都市国家であるため国内の人口や消費の規模は小さいですが税制優遇や優れたインフラ環境、また英語や中国語が話せる人材の多さから、香港と並び欧米諸国の多国籍企業のアジア太平洋地域の統括拠点が置かれることが多く1990年代頃から東南アジアにおける金融センターとして不動の地位を保っています。

企業にさまざまなメリットが…シンガポールの戦略とは?

シンガポールに拠点を置く多国籍企業は約7,000社。

多いですね…

多国籍企業がシンガポールを注目する最大の理由はアジア事業のハブとしての魅力です。実際、シンガポールに展開する多国籍企業の6割が地域(グローバル)統括拠点としてシンガポールを活用しているそうです。「シンガポール経済開発庁調査」

では統括拠点としてシンガポールを活用する理由とは何でしょうか?

答えは

アジア事業のハブ

です。

具体的には下記の3つの理由があります。

1.空港の利便性、世界有数の取扱量を誇る港湾設備(2009年の海上コンテナ取扱量2,587万TEU)等、東南アジアの中心に位置する「地の利」

2.金融・サービス機能、研究設備など整ったビジネス・インフラ、優秀な英語人材

3.各種政策(優遇税制、租税条約、FTA、贈収賄に対する厳格な取締りなど)

あのDeNAもシンガポールを選んだ

今年9月1日に設立されたばかりのDeNA Asia Pacific Holdingsはシンガポールに拠点を置き、東南アジア、南アジアにおけるソーシャルゲーム事業(Mobage)の統括拠点と位置付けられています。

シンガポールを含む東南アジア・南アジアのデベロッパーへの開発支援やゲームの調達、デベロッパーとの提携・買収などによるゲーム開発体制の構築を図っていく他、グローバル版「Mobage」の同地域向けローカライズを担う拠点として機能を拡大していきます。

シンガポールに現地法人「DeNA Asia」を設立~東南アジア・南アジアにおけるソーシャルゲーム事業を統括~

東南アジア・南アジアにおける事業の統括
(1)デベロッパーの開拓

(2)ゲーム開発体制の構築

(3)プラットフォームのローカライズ

アジア戦略のハブとなるのがシンガポールです。

法人税制度

シンガポールは世界最先端の制度を取り入れています。

だから強い

1.低い税率
シンガポールは競争力を高めるため、法人税率を引き下げてきた。2009年度予算案では課税年度2010年(課税対象は2009年の利益)から法人税率を18%から17%に引き下げた。この引き下げによって、シンガポールの法人税率は、アジアでは香港の16.5%にほぼ並ぶ低いものになっている。課税所得のうち最初の30万Sドルに対しては部分免税制度が適用されるため、実効税率は17%未満になる。

2.キャピタルゲイン課税なし
シンガポールにはキャピタルゲイン課税がない。これは、企業が海外投資を計画する際に撤退戦略まで含めて考えると、重要なポイントとなる。事業再編目的で子会社を売却(投資有価証券を譲渡)する場合に生じるキャピタルゲインに課税が生じないため、その分だけ撤退コストを小さくできるからである。

3.多数の租税条約
シンガポールは約60カ国と租税条約を結んでいる。シンガポールに置かれた地域統括会社は、租税条約に盛り込まれている二重課税防止条項を利用して、配当や利息、ロイヤルティに係る源泉税の削減を行うことがでる。これによりクロスボーダー取引を頻繁に行う企業は、二重課税を最少にできる。

4.国外源泉所得の免税
シンガポールは国外所得免除方式の課税制度を採用している。国外源泉所得はシンガポールに送金した場合にのみ課税され、ある特定の所得はシンガポールに送金した場合でも免税になる。一つの例として、外国企業からシンガポールに還流された配当金は、その企業が所在する国の表面税率が15%以上の場合、その国で課税されている(源泉税や受取配当のもとの利益に課される所得税などを納付している)ことを条件に、非課税となる。そのほかにも免税措置が適用される場合があり、シンガポール税務当局は現実に即して柔軟に対応する姿勢をとっている。

5.ワン・ティア・システム
シンガポール政府はワン・ティア法人税制度を採用しており、シンガポールに置かれた持ち株会社や地域本社が本国に配当する際には一切課税が生じない。シンガポール企業が支払う法人税が最終の納税となる。したがって、シンガポール企業が国内の個人、法人に支払う配当金は、受け取る側では課税対象外であり、国外の企業に配当する場合は源泉税が課せられない。

6.タックスヘイブン税制や過小資本税制
他の多くの国と異なり、シンガポールには、CFCルール(controlled foreign corporation rules、いわゆるタックスヘイブン税制:在外子会社の利益に対する合算課税の制度)や過小資本税制はない。支払利息は、資金が課税所得を生み出すために使用されていることを明確に実証できる限り、損金に算入することができる。

7.対内投資促進税制
国際的な競争力を高めるための税制のほかに、企業は、海外からの直接投資を促すために設けられた優遇税制を利用することができる。

優遇税制

優遇税制は、大きく分けて5 分野に分類されます。

1.地域統括企業向け

2.技術革新・製品開発企業向け

3.海運事業者向け

4.貿易・海外事業拡張・観光促進企業向け

5.金融サービス企業向け

シンガポールへの投資を検討している日本企業や既にシンガポールで操業している日本企業に利用できるものであるんです。

シンガポール進出のメリット

1.政治が安定しており、政府が効率的かつクリーン(汚職などがない)
2.安定的かつ信用できるビジネスインフラ(法制度、港湾、空港、通信、交通網が整っている)
3.公用語の中でも英語が重視され、ビジネス言語となっている(国民の英語のレベルが高く、日本人も仕事が進めやすい)
4.法人税率が17%と低く、キャピタルゲインが非課税である
5.親日家が多く、日本・日本人に対して好意的でビジネスがやりやすい
6.労使関係が安定している
7.会社設立が容易で、100%独資(個人株主・会社株主)が認められている

シンガポール進出のデメリット

1.ほかのASEAN諸国と比べて、全般的に物価がかなり高い(人件費、家賃(オフィス、駐在員の住居)、自動車の維持費(購入やレンタル費用、電子式道路課金<ERP>システムへの対応費用、駐車料金)、医療費など)
2.日本からの駐在予定者の就労ビザ取得と更新の基準が厳しくなりはじめた(多くの進出予定中小企業にとって、駐在予定日本人スタッフの就労ビザ取得は重要)
中小機構HP

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