1945年9月4日 新日本世界貿易へ参加

1945年9月4日は今から72年前の今日で終戦から一ヶ月も経過していない頃ですが、この頃の日本がどういう状態であったか、そして将来にどのような希望を抱いていたのかを見ていきたいと思います。1945年9月4日朝刊朝日新聞より


世界貿易へ参加

新日本の産業構成はどうなるか、明治元年の日本民族は三千万、うち80%は農民であった、繊維工業の建設に始まり、機械工業、重工業の拡充を逐次すすめて、いま八千万の人口を擁する一大国家を建設し、それと同時に現在の人口構成は農業人口40%を割り、工業人口30%に達している、いま台湾、朝鮮、満州を失い世界経済と絶縁して果たしてわれらは生き得るかポツダム宣言はその第十一項に

日本国は其の経済を支持し、かつ公正なる実物賠償の取り組みを可能ならしむるが如き産業を維持することを許さるべし、但し日本国をして戦争のため再軍備をなすことを得しむるがごとき産業は此の限りにあらず、上目的のため原料の入手を許さるべし、日本国は将来世界貿易関係への参加を許さるべし

つまりわかりやすく書くと下記になります。

日本は経済復興し、課された賠償の義務を履行するための生産手段、戦争と再軍備に関わらないものが保有出来る。また将来的には国際貿易に復帰が許可される。

といっている、すなわち第一項では平和産業の許興を規定し、第二項において原料資源の入手、世界貿易への参加を認めている。この項は非常に空漠(何もなく、果てしなく広がっているさま)たるものであり、第一に総力戦の実際として民需産業のほとんど大部分が軍需産業に転換している今日民需、軍需の限界は明らかでない、兵器工場のごとく明瞭なるものは別として化学工業、機械工業などのごとく平時は民需品を生産しつつ戦時には軍需工場に転換できるものはいかにするか、それらの一切を厳格に制約するならば国民経済は成立し得ない。また第二項にいう原料資源の支配とは原料資源の所在地の領有を意味するか、またはさらに開発事業の運営そのものまでも意味するのか明らかでない、ただ、原料資源の入手、及び時期は示されぬが世界貿易の参加をゆるしているのであるから、将来日本産業を世界経済の構成に加えることは明瞭である。

上記の記事には終戦後1ヶ月と経過していないこともあり戦時中の感覚が全然抜けていませんね。

また今後日本がどうなってしまうのかという不安が入り混じっているように感じます。

「将来日本産業を世界経済の構成に加えることは明瞭である」

既に戦後72年が経過していますが日本は世界経済の構成に加わったどころか今や世界経済の中心にいます。すごいですよね

賠償の公正解決期待

今後日本経済の直面する事態は復興問題、一千万の戦災者の措置、軍需工場から放出される労務者(特に、第二次世界大戦中に日本の占領下で現業系労働に従事した外国人のこと)と帰還兵士を加える膨大な失業者群の対策、通貨の膨張など、疲弊した日本経済として負うにあまりに重すぎる問題をひかえている農業対策、小農家政策だけではこれに対しあまりにも力弱く、問題を解決し得ないことは明らかである、民族が生きるための産業再編の方式はもっと深く検討され、全国民の英知と努力を絞って成し遂げられねばならぬし、かかる国民経済再建に対する連合国側の良識ある協力を要請しなければならぬ、しかし、経済再建と密接に関係する賠償問題については「公正なる実物賠償」といっているのみであるが、それが日本産業の維持を可能ならしむる限度なるとも保障されている、前大戦(第一次世界大戦)のドイツに対する過酷な賠償取立てがドーズ案、ヤング案との衆智(大勢の人の知恵)を結集しつつ、しかもなお各国が自国の虜になり、そのために結局ドイツ経済を破壊し、ひいては欧州経済全体を混乱に陥れ遂にはアメリカまでその渦中に巻き込むにいたったのみならず、一方では賠償負債によるドイツ国民生活の苦痛がその排外心を激成しナチス勃興の基盤を作った記憶は世界の何人にも新しい所である、わが政府と連合国との間に上述の諸問題が今後平和の名によって折衝され、世界の何人にも正しい結論に達しうることを期待したい

この記事を読むと当時日本が多くの問題を抱えていたことが分かります。また、第一次世界大戦のドイツに対する過酷な賠償がナチスを大きくさせたということも書かれており、ナチスの勢力が拡大した背景が賠償金だということに戦後1ヶ月を経たずに記述してあるのです。つまり戦時中からこのことに日本は気が付いていたと、しかし日本はドイツと同盟をしてしまったんですね…

この記事の最後には「諸問題が今後平和の名によって折衝され、世界の何人にも正しい結論に達しうることを期待したい」とあります。そうですね日本は第一次世界大戦後のドイツのようにはならなかったわけで、この期待に連合国は答えたと言えるのではないでしょうか。歴史を知って国や人は成長していったのだなと思わされます。

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